ソパデアホはカスティーリャ地方を代表する料理の一つです。
特に首都マドリッド辺りで盛んです。
ソパはスープ
アホはニンニク
の事です。
簡単に出来ますが
極めて美味なスープです。
世界を見渡してもちょっと対抗馬が思いつかないくらい美味しいスープです。
叩き台は
貧乏人のスープと呼ばれたスープで
ニンニクをオリーブオイルで色付けたら
日が経ちカチコチに乾燥し、歯が立たなくなったパンを加えて
ただの水を注ぎ
徹底的に時間を掛けてパンの少ない旨味をなんとか煮出し
塩で味付けしただけのスープです。
これは流石に文献で読んだときにドン引きしました。
スペインが大変貧しかったころのスープだそうです。
試しに作ってみました。
飲めなくはありませんが、予想を超える味にはなりませんでした。
現代のソパデアホは
ハモンセラーノとチョリソーの端くずを刻んで
カスエラ(陶板)に入れたEXバージン油に加えて低温でじっくりと温めて旨味を抽出します。
高温で炒めてしまうとEXバージン油が酸化してしまい健康に悪いですし不味くなります。
カスエラは素焼きの陶器です。
素焼きから出る気泡は油と水の乳化を助けるのでソパデアホに理想的ですが
カスエラが無ければフライパンでも手鍋でも大体似た感じで出来ます。
皮付きニンニクを包丁の腹などで軽く潰し皮を取り除いたニンニクを加えて狐色になるまで色づけます。ニンニクは刃物で切ると味が落ちます。
フランスやイタリアではニンニクの芽を「消化に悪い。」と言い取り除きます。
スペインでは「そりゃニンニクに失礼だろう?」と言いニンニクの芽も使います。
中国でもニンニクの芽は普通に人気食材ですね。
和食ではニンニク自体が敬遠されます。和食のルーツは神饌です。たぶん神仏習合の影響でニラやニンニクは遠ざけられたのでしょう。仏教では「ネギの仲間は精が付きすぎて修行の妨げになる。」と言われていたからです。伝統的な精進料理では葱の仲間は使われません。現在和食と言えば京懐石ですが、懐石料理は茶道の一部です。最後の茶が主役なので淡味が重視され、茶の味を邪魔するニンニクのような強い味は避けられたようです。何故か葱だけは和食に取り込まれましたが。
私は5つの国の料理とも習いました。
それぞれの料理文化を尊重してニンニクを使い分けています。
カチコチに乾燥したバゲットをアラレ大に刻んで加えます。バゲットでなくてもカンパーニュとかでも良いのですが砂糖や牛乳やバターや卵が入っていないパンが望ましいのです。
乾燥パプリカの粉を加えたら焦げやすいので即座に水を加えます。
日本のスペインレストランで習ったやり方では、水ではなく、牛脛肉と鶏ガラと香味野菜でとったブイヨンを加えました。
私がシェフをしていた店では、豚骨(げんこつ)と豚足とニンニクでとった、スペインのカルドを簡略化した自家製豚骨スープを加えました。豚骨(げんこつ)は鹿児島の黒豚のものが長時間煮だしても豚特有の臭みが出ないのでオススメです。
ブイヨンや豚骨スープで作るとより旨みが濃くなり大変美味しいですが
濾過機を使ったり市販のペットボトルの水を使ったりした美味しい水で作れば
文句なしに美味しいソパデアホになります。
現在アラカンの私は美味しい水で作ったソッパデアホの方が繊細で好きなくらいです。
味をみて塩胡椒します。
塩加減はハモンセラーノやチョリソーの量によるので、塩は入れなくても良い場合もあります。
豚肉には胡椒が合うので胡椒は入れるのが良いでしょう。
卵を落として白身が白くなりたてぐらいが私の好みです。
卵の殻が入ると台無しなので一度器に割り入れて確認してから落としましょう。
パセリのみじん切りを振ると尚よいでしょう。
昔のレストランはパセリの葉のみじん切りはさらしでギューギューに絞ってバットに広げて乾燥させパセポンと呼んで常備したものですが
パセリのみじん切りは絞らないで刻んだまま振った方が遥かに香りが良いと思います。
イタリアンパセリより普通のパセリの方がソッパデアホには合います。
パセリの葉だけでなく軸もみじん切りにして使うと良いでしょう。香りも十分ありますし味は葉より濃いくらいです。
調理したカスエラのまま供卓します。
木のスプーンで飲むとグッと雰囲気が出ます。スプーンが熱くなり過ぎませんしね。
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