自分の愛着障害の構造を理解する為のツール               マーラーの愛着形成発達モデル

愛着障害とは

周囲から、ありのままの自分を、認められずに育った人の事

と言えます。

それにより大人になっても生きづらさを感じることが多いという障害の事

です。

人によって症状が大きく異なり

ほとんどの心の問題は根っこにあるのは愛着障害だ

と言われています。

愛着障害の原因

・エリクソンの””基本的信頼感の欠如””

エリクソンの理論における「基本的信頼感の欠如」は、発達心理学の重要な概念であり、特に乳児期における養育者との関係に深く関連しています。この段階では、子どもが養育者からの愛情やケアを受けることによって、世界に対する信頼感を形成します。以下に、基本的信頼感の欠如について詳しく説明します。

基本的信頼感の定義
エリクソンは、基本的信頼感(basic trust)を、乳児が養育者(主に母親)からの一貫した愛情とケアを通じて得る感覚と定義しました。この信頼感は、子どもが自分自身や他者、さらには世界全体を信じる基盤、核となります。基本的信頼感が育まれることで、子どもは「自分は愛されている」「世界は安全である」と感じることができ、これが後の友人関係から始まり人間関係全般に広がる輪の発達や社会生活において重要な役割を果たします。

基本的信頼感の欠如の原因
基本的信頼感が欠如する主な原因は、以下のような要因が考えられます。
・不安定な養育環境: 養育者が一貫していない、または愛情を示さない場合、子どもは自分のニーズが満たされないと感じ、信頼感を築くことができません。
・虐待や放任: 身体的または精神的な虐待、あるいは放任は、子どもに深刻な影響を与え、基本的信頼感の欠如を引き起こします。これにより、子どもは「自分は愛されていない」「世界は危険である」と感じるようになります。
・養育者の精神的健康: 養育者自身が精神的に不安定であったり、ストレスを抱えている場合、子どもに対する反応が不十分になり、信頼感の形成が妨げられます。

基本的信頼感の欠如がもたらす影響
基本的信頼感が欠如すると、以下のような影響が生じることがあります。
・人間関係の困難: 大人になってからも、他者との関係を築くことが難しくなり、孤独感や不安感を抱えることが多くなります。信頼感が欠如しているため、他者を信じることができず、親密な関係を築くことができません。
・自己肯定感の低下: 自分自身を信じることができず、自己評価が低くなることがあります。これにより、挑戦を避けたり、失敗を恐れたりする傾向が強まります。
・心理的問題の発生: 基本的信頼感の欠如は、うつ病や不安障害などの心理的問題を引き起こす要因となることがあります。信頼感がないため、ストレスや困難に対処する能力が低下します。

まとめ
エリクソンの理論における基本的信頼感の欠如は、乳児期の養育環境に大きく依存しています。愛情やケアが不足すると、子どもは信頼感を形成できず、これが後の人生において様々な心理的問題や人間関係の困難を引き起こす可能性があります。したがって、早期の養育環境が子どもの発達に与える影響は非常に重要であり、適切な支援が求められます。とはいえこの基本的信頼感という核は母親以外でもよく乳幼児期以外でも作れるモノで、基本的信頼感の欠如は取り返しのつく問題だそうです。

・バリントの””基底欠損””

「基底欠損」という概念の概要
マイケル・バリント(Michael Balint)が提唱した「基底欠損」(basic fault)は、主に母子関係における愛情や保護の欠如から生じる心的構造の欠損を指します。この概念は、精神分析の文脈で特に重要視されており、神経症やパーソナリティ障害の根本的な原因とされています。バリントは、基底欠損があると、患者は自己に対する不安や不具合を感じ、他者との関係においても深刻な問題を抱えることになると述べています。

基底欠損の特徴
・愛情剥奪: 基底欠損は、幼少期における母親からの愛情や保護が不足していることに起因します。この欠如は、後の精神的な問題を引き起こす要因となります。
・神経症のリスク: バリントによれば、基底欠損を持つ人は神経症を発症するリスクが高く、退行的な防衛機制を用いることが多いです。これにより、幼児的な行動や言語的コミュニケーションの困難が見られることがあります。
・治療的アプローチ: バリントは、基底欠損を持つ患者に対しては、共感的で支持的な治療アプローチが必要であると強調しました。治療者は、母親の役割を代替するような関わりを持つことで、患者の心的な欠損を補うことが求められます。

治療論と基底欠損
バリントの治療論では、基底欠損を持つ患者に対しては、従来の精神分析技法が必ずしも有効ではないとされています。彼は、患者との良質な心的接触を重視し、患者の「正当な」ニーズを適切に認識し応答することが重要であると述べています。

基底欠損の影響
・心理的影響: 基底欠損は、患者が自己を「駄目にされた」と感じる原因となり、深刻な不安を引き起こします。この感覚は、治療者に対しても「失敗しないでほしい」という強い要求として表れることがあります。
・社会的関係: 基底欠損を持つ人々は、他者との関係においても依存的な傾向を示し、特定の親密な対象に依存しやすくなります。これにより、社会的な機能が損なわれることがあります。

結論
バリントの「基底欠損」は、精神分析における重要な概念であり、特に母子関係の影響を強調しています。治療においては、患者の心的な欠損を理解し、共感的なアプローチを取ることが求められます。この理論は、現代の心理療法においても多くの示唆を与えています。

愛着障害の症状

・自己完結型症状(自分を責めるタイプ)

抑うつ症状

不安障害

適応障害

神経症

依存症

摂食障害

etc

・行動化型症状(他者に危害を与えるタイプ)

家庭内暴力(DV)

反社会的行為

etc

これらは、実は愛着障害にたいする自己治癒反応です。

周囲が頑張って症状を一時的に封じ込めても

根本的な問題である愛着障害自体は悪化するだけなので

キリがありません。

マーラーの愛着形成発達モデル

ピラミッド状のモデルです。

愛着形成を理解し愛着障害を治すのにとても役立つ優秀なモデルだと思います。

人によって異なる、自分は愛着形成の発達段階のどの時期の課題をやり残してしまったのか?

が判別できるようになるツールです。

他者とは異なる自分だけの愛着障害の構造

が理解できて

自分が取り組み直すとよい課題

が推定しやすくなるのです。

ピラミッドは5段階に分かれています。

つまり

愛着形成には段階があり

それは5段階に分かれている

と考えられているわけです。

うまくいった愛着は5層構造である

ということも出来るかもしれません。

最下段から

1、自閉期

2、共生期

3、移行期

4、練習期

5、再接近期

と5段に積み上げられて行きます。

1,自閉期

生後間もなくのため自分と他者(例えば母親)の区別が付かない時期です。

自閉期の課題取り組みに問題があると

赤ちゃんは抱っこを嫌がります。

理由は養育者(例えば母親)との関係に安心感を持てないからです。

2,共生期

養育者(例えば母親)と赤ちゃんがくっつく時期です。

養育者(例えば母親)と一心同体を感じたか

養育者(例えば母親)と融合体験を持てたかどうかが大事です。

今後の発達の鍵になる大事な時期です。

共生期の課題取り組みに問題があると

赤ちゃんと視線が合いません。

理由は養育者(例えば母親)に融合出来ていないからです。

3、移行期

養育者(例えば母親)と赤ちゃんが分離する時期です。

移行期の課題取り組みに問題があると

赤ちゃんが人見知りしません。

理由は安心できる対象と安心できない対象の違いが分からないからです。

大人になっても持ち越している人が多いと言われています。

4、練習期

養育者(例えば母親)と別れの練習をする時期です。

例えば「いないいないばあっ!」などです。

練習期の課題取り組みに問題があると

赤ちゃんは他者に指差ししません。

理由は他者と自分の違いが分からないからです。

5、再接近期

養育者(例えば母親)と一度離れたのち、また養育者(例えば母親)にまとわりつく時期です。

これはたとえ離れたとしても帰る場所があると分かったという事です。

再接近期の課題取り組みに問題があると

赤ちゃんは早すぎる自立をします。

理由はそこには安全基地は無いと感じているからです。

以上5段階を無事に経ると及第点の愛着が形成されるというわけです。

もしどこかの段階もしくは複数の段階に欠損があると

不完全な愛着が形成され

不完全で不安定で危険な愛着を土台にその後の心を発達させる羽目になります。

問題の多い人生になるのは目に見えていると言えるでしょう。

不幸にも愛着障害のまま成長した場合に生じる問題として以下が考えられます。

学童期に生じる問題

1,不登校問題

対人不安があるから外に出て行くことが出来ません。

無理に登校させても課題を乗り越えていないので繰り返します。

2,視線恐怖症、コミュ障

友達と視線が合わせられず、コミュニケーションが取れません。

3,イジメの標的にされる

安全な友達と安全でない友達の区別が付かず自ら危険な状況に陥ります。

4,友達のモノを勝手に自分のモノにしてしまう。

友達と自分の区別が付いていません。

5,母子癒着

母親と自分の区別が付いていません。

6,引っ込み思案

いつでも帰れる安全基地がないのでチャレンジ出来ません。

7,良い子でいようとする

見捨てられ不安があるから嫌でもNOと言えません。

8,万引きしたり暴力を振るう

万引きは愛を盗む行為とも呼ばれます。

問題行動をする事で大人の注目を集めようとします。

愛着対象がありしっかりと内在化すると

このような行動は自然に消失していくと考えられています。

9,主体性の欠如

子供が嫌だと主張し

親がそれを受け止めると、子供は自信が付き、主体的に選択が出来る様になります。

親が決して受け止めないと、子供は主体性を無くし、自立出来なくなります。

青年期以降に生じる問題

1,対人恐怖症

他者に安心感を感じる事が出来ません。

2,親密性の回避

他者と融合する事から逃げ出そうとします。

3,パーソナルスペースが分からない。

相手のパーソナルスペースに無神経に侵入してしまい嫌がられます。

4,依存症、共依存症

幼児が母親に依存するように、何かに依存しないと生きていけないように感じます。

例えば、アルコール依存症、薬物依存症、仕事依存症、ギャンブル依存症、sex依存症、ショッピング依存症、etc、です。

共依存症は、依存症の子供無しでは生きていけないように感じる依存症です。

5,DV被害者DV加害者になる

DV加害者はパートナーを愛着対象と捉えていますが、課題を乗り越えていないので、衝動的な甘えが出やすく、身体は大きいのでそれがDVになります。

6,ストーカーになる

乳児のする母親の後追いの代替です。自分の欲求だけで相手のことは考えられません。

7,引きこもり、ニート

いつでも帰れる安全地帯が無いと感じているので外に出て行けません。

それでいて安全地帯になれなかった養育者(例えば親)とも交流しません。

8,リストカットなどの自傷行為

愛着形成不全でさみしさや怒りが溜まっており何かのきっかけで噴出します。

9,パーソナリティ障害

大きくなった幼児をパーソナリティ障害と呼びます。

特に自己愛性パーソナリティ障害(ナルシスト)は愛着障害由来だと考えられています。

10,恋愛を繰り返す

基本的信頼感が脆弱なので一人の人と信頼関係が築けず、色んな人に興味が移ってしまいます。

11,児童虐待

養育者に愛着障害があると子供を思い通りにする傾向があるそうです。

まとめ

この様に2歳くらいまでに愛着形成が上手く出来ていないと

その愛着の不完全さに応じて

大人になっても様々な問題が生じているのが分かります。

また

周囲の不理解が愛着障害を長引かせていることも分かります。

一方で

大人の愛着障害は

マーラーの愛着形成発達モデルを参照して

母親との間でスキップしてしまった愛着形成の課題を

母親以外の信頼できるパートナーとの間で

一つずつキチンと乗り越えていけば良い

と分かります。

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