「お前、うちの店来ないか?」
調理師専門学校のフレンチの講師に誘われました。
私は当時すでにスペインレストランに就職してしばらく働いていました。
元々フレンチ志望だった私はとても悩みましたが
丁重にお断りしました。
その理由の一つがスペインレストランで出していた牛ミノの煮込みの美味しさだったのです。
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ところがなんと
そのレストランでは牛ミノの煮込みは仕込んでいませんでした。
チェーン展開していたので、一括でセントラルキッチンで仕込んでいたのです。
・
数年後、念願のセントラルキッチンに移動しました。
そこでは
エビの殻剥きや烏賊の皮むきやつぶ貝など下拵え各種
や
色々な料理のベースになるソース各種
・トマトソース(通称ソフリット)
・エスパニョーラソース(1週間ほど煮込みます。デミグラスソースの一歩手前のソースです。)
・イカ墨ソース
・アリオリ(有名なニンニクマヨネーズではなく文字通りのニンニクとオリーブ油をミキサーにかけただけのモノです。)
・ピカーダ(松の実とニンニクのソース)
・サフラン水
・etc
や
様々なマリネやスペアリブや様々なフライなどのデリカテッセン各種
などに加え
牛ミノの煮込み
をはじめとする煮込み各種
などを仕込んでいたのです。
・
セントラルキッチンの牛ミノの煮込み
は想像以上に手間暇かけたモノでした。
ザックリと3段階に仕込みます。
1,下茹で
2,煮込み
3ソース煮込み
です。
1,下茹で
牛ミノは塩と酢で揉み洗いし良くゆすぎます。
水から茹でて茹でこぼします。
もう一度水から茹でて茹でこぼします。
もう一度水から茹でて香味野菜を入れて下茹でします。
下茹で汁は採っておきます。
2,煮込み
煮込み用の煮汁は豚骨と豚足と香味野菜で作ります。
徹底的に煮出して一晩冷まし一旦煮凝りにします。
翌日煮凝りから手探りで骨や軟骨や香味野菜を取り除きます。
骨、軟骨などを除いた煮凝りと下茹で汁の取り置きを合わせて
牛ミノと香味野菜(ニンニク入り)を入れて火にかけ煮込みます。
下茹で汁はじつは内臓特有の雑味や臭みがあるのですが、それを計算して適量加えることで味に深みが出ます。これが牛ミノの煮込みの極意だと教わりました。
牛ミノが柔らかくなるまで煮込みます。
3,ソース煮込み
セラーノハムとチョリソーのみじん切りと香味野菜(ニンニク入り)を炒めて
白ワインとソフリットとエスパニョーラソースと煮込んだ牛ミノと煮込み汁にローリエを加えて
更に煮込みます。
味付けは塩、胡椒、カイエンペッパー、パプリカで完成です。
・
後年このレシピを考えた先生の店でも学びましたが
更に本場の牛ミノの煮込みに近づいて
美味しく進化していました。
エスパニョーラソースは時代を反映してフォンドヴォーに代わっていました。
牛ミノの他にセンマイやハチノスやギアラも入っていました。
自家製モルシージャ(ブラッドソーセージ)と自家製チョリソーもごろっと入っていました。
一流は常に前進し続けているんですね。
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