スペイン料理という料理はありません。
スペインに限らずヨーロッパ諸国は
国家などという短期的流動的な政治的区分
と
料理をはじめとする長期的な民族文化的区分が
一致していない事が多いのです。
そこが現在スペインという国の領土にたまたま組み込まれているだけで
そこにあるのはスペインという国が生まれるより昔から食べ続けられてきた伝統郷土料理です。
私がスペイン料理の名のもとに教わったのは
・バスク料理
・カタルーニャ料理
・ガリシア料理
・カスティーリャ料理
・ナバーラ料理
・アストゥリアス料理
・アラゴン料理
・レオーン料理
・エストゥレマドゥーラ料理
・バレンシア料理
・アンダルシア料理
・ムルシア料理
・アンダルシア料理
・バレアレス諸島料理
などです。
それぞれ風土の影響もあり多様性に富み、それぞれ個性的な料理です。
スペイン人の料理研究家によるとスペイン全土で共通する料理は
子羊のグリル
くらいだそうです。
スペイン料理の多様性を生むもう一つの要素が宗教です。
現在スペインと呼ばれる土地の多くは古くはイスラム教徒が多く住んでいたようです。
国土回復運動の名のもとにカトリック教徒が殺戮の限りを尽くし
力づくでこの土地を奪い取った(奪い返した)そうです。
この折り、カトリック教会は踏み絵をしました。
豚肉料理が食べられるかどうか?
で
イスラム教徒か?それ以外か?選り分けたのです。
豚は
重機並みの耕耘能力を持ち
トイレで糞尿だけで飼育できる上
ひづめ以外捨てる場所がないと言われるほど大変に有益な動物で
世界中で家畜として重宝され飼われて来ました。
しかしイスラム教開祖マホメットには
「不浄な生き物。」
と嫌われたようです。
そのためイスラム教徒は豚が食べれないそうなのです。
現在スペインと呼ばれる土地では、この踏み絵以来
豚肉が盛んに食べられるようになりました。
ロースは塊のまま煮込んだり料理されることが多かった様です。
腿などは塩漬風乾され生ハムなどにされました。
現在、フランスやイタリアを凌ぐと称される世界トップクラスの生ハムが作られます。
硬い部位は挽かれて有名なチョリソーをはじめとする腸詰め類にされました。
生ハムや腸詰めの端くずは刻んでスープなどのインスタントだし代わりに使われることも多いのです。
極めつけは仔豚の丸焼きです。
妊娠中の母豚のお腹を割いて仔豚を取り出し丸焼きにします。
スペイン人は
肉を石窯で良く焼きにするのを好む
と同時に
柔らかい肉を好みます。
この矛盾問題を止揚したのが乳飲み前の仔豚を焼くという料理だったのです。
鬼気迫るこだわりを感じます。
この様にスペインでは豚肉食文化が非常に独自かつ高度に発展しました。
一方で
イスラム教徒由来の料理
ユダヤ教徒由来の料理
も各地で伝えられ続け
現在もみられる多様性のある食文化が形成されたのです。
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